住宅ローンの諸費用ローンにご用心

家計管理

以前の記事では、住宅ローンを組んだ際に諸費用ローン(付帯ローン)の金利について解説しました。

諸費用ローン(付帯ローン)の59万円を20年で返済すると利息が26万円になった

わが家が契約した諸費用ローン(付帯ローン)は、59万円を年利4%・20年で返済する契約で、総支払額は85万8千円となり、利息だけで26万8千円も支払う内容でした。

毎月の返済額は3,575円と一見すると負担は小さく見えますが、長期間になることで利息は確実に積み上がっていきます。

今回は、その諸費用ローンを全額返済することにした理由と、実際に感じた「借金の本質」についてまとめます。

諸費用ローンを全額返済することにした理由

59万円の借入から約5年が経過し、残高は483,333円となっていました。

これまでに支払った利息は年利4%で111,399円、さらにこのまま返済を続けた場合、今後支払う利息は156,601円になります。

本来であれば支払う必要のなかったお金を、すでに11万円以上支払っていることになります。

わが家のローンの数字を整理すると、次のようになります。

項目 金額
当初借入額 590,000円
約5年後の残高 483,333円
すでに支払った利息 111,399円
このまま返済を続けた場合の残利息 156,601円
繰り上げ返済手数料 11,000円
今すぐ返済することで節約できる金額 145,601円

この時点で「このまま払い続けるのはもったいない」と強く感じました。

「払い続けるコスト」をもう一つの視点で見る——機会費用という考え方

残利息156,601円という数字は、返済しなかった場合に確実に失うお金です。しかし「機会費用」の観点からも考えてみましょう。

仮に残高483,333円を繰り上げ返済に充てず、年利4%の複利運用に回したとします。15年後には約870,000円になります。一方で、ローンを保持したまま15年間払い続ければ、その期間に支払う利息は156,601円です。

問題は、年利4%以上の確実なリターンが得られる投資先がほぼ存在しないという点です。インデックス投資の期待リターン(後述)は長期では年4〜7%程度とされますが、それはあくまで期待値であり、元本毀損リスクがあります。一方、ローン返済による「年利4%のコスト削減」はリスクゼロの確定リターンです。

選択肢 リターン リスク
ローンを繰り上げ返済する 年利4%相当・確定 ゼロ
国内株式インデックスに投資 期待値 年3〜5%(変動あり) 元本割れリスクあり
全世界株式インデックスに投資 期待値 年5〜7%(変動あり) 元本割れリスクあり
定期預金(メガバンク、2024年時点) 年0.025〜0.2%程度 元本保証

定期預金の金利が年0.025〜0.2%程度(2024年時点・メガバンク)に留まる現状では、ローン返済のほうが「運用」として圧倒的に有利であることは明らかです。

繰り上げ返済でも手数料が発生する現実

このローンでは、全額繰り上げ返済にも11,000円の手数料がかかります。一見すると高く感じますが、計算すれば答えは明快です。

156,601円(残利息)− 11,000円(手数料)= 145,601円の節約

多少の手数料を支払ってでも、長期的には約14万5千円の支出を抑えられる計算になります。

これは「早期返済の効果」として広く知られる考え方と一致します。ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏は著書『年収200万円からの貯金生活宣言』の中で、「借金の返済は最強の運用である」と断言しています。年利4%の確実なリターンを得られる金融商品など、リスクなしには存在しないからです。

諸費用ローンの金利は「住宅ローン」とは別物

住宅ローンの変動金利が史上最低水準で推移してきたのに対し、諸費用ローン(付帯ローン)の金利水準はまったく別の基準で設定されています。

住宅金融支援機構の調査(2023年度)によると、住宅ローンの民間金融機関変動金利の最頻値は年0.3〜0.5%台で推移しています。一方、各金融機関が提供する諸費用ローンは一般的に年3〜5%台に設定されており、住宅ローン本体と比較すると金利差が10倍前後に達することも珍しくありません。

この金利差を5年間・483,333円の残高で具体的に計算すると、次のようになります。

金利水準 残高483,333円・5年間の利息試算
年利 0.5%(住宅ローン変動・最安値水準) 約6,100円
年利 2.0% 約24,400円
年利 4.0%(わが家の諸費用ローン) 約49,000円
年利 6.0% 約74,000円

「住宅ローンの付随商品だから同水準だろう」という思い込みは、数字を見ると根拠のない楽観論であることがわかります。

借金はお金を奪っていく——行動経済学が明かす「小さく見せる」罠

今回強く感じたのは、借金は気づかないうちにお金を奪っていくということです。毎月の支払いは小さいため負担を感じにくいですが、「長期間続く」「利息が確実に積み上がる」「総額で見ると大きな支出になる」という特徴があります。

この「小さく見せる」設計は、偶然ではありません。

行動経済学者のダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞)が提唱した「フレーミング効果」によれば、同じ情報でも提示の仕方によって人間の判断は大きく変わります(Kahneman & Tversky, 1979)。「毎月3,575円」という表現は、「20年間で85万8千円」という同じ事実を、心理的に小さく感じさせるフレーミングです。

また行動経済学では「現在バイアス(Present Bias)」という概念も知られています。人は将来の大きな損失より、目の前の小さな支払いに目を向けがちです。月々わずかな支払いが続く構造は、このバイアスを巧みに利用しています。

シカゴ大学経済学部の研究(Laibson, 1997)では、現在バイアスが消費者の借入行動に大きく影響することが示されており、人は「今すぐの負担が小さい」という理由だけで、将来の大きな損失を受け入れてしまう傾向があると結論づけています。

見るべきは「毎月いくらか」ではなく、「最終的にいくら支払うのか」です。

ロバート・キヨサキは著書『金持ち父さん 貧乏父さん』の中でこう定義しています。
「負債とは、あなたのポケットからお金を奪っていくものだ」

毎月3,575円は、表面上は「小さな負担」です。しかし20年間払い続ければ、そのポケットから85万円以上が抜かれていく——これが負債の本質です。

参考として、「毎月の支払い額だけ」で判断した場合と「総支払額」で判断した場合の差を見てみましょう。

判断の視点 見える数字 見えていない数字
毎月の支払いで判断 3,575円 268,000円の利息
総支払額で判断 858,000円 正確なコストを把握できる

日本の金融リテラシーは世界的に低い——データが示す現実

金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査2022」では、金利の計算や複利の仕組みを正しく理解している日本人の割合は約半数にとどまることが示されています。この知識の差が、判断の差に直結します。

同調査では、以下のような実態も明らかになっています。

調査項目(金融広報中央委員会「金融リテラシー調査2022」) 正答率
金利の概念(複利計算)を正しく理解している 約47%
インフレと購買力の関係を正しく理解している 約56%
リスクと分散投資の関係を正しく理解している 約37%

また、OECDが2020年に実施した「金融リテラシー・金融包摂に関する調査(OECD/INFE)」では、日本の金融リテラシースコアは調査対象26カ国中最下位グループに位置づけられています(スコア12.7点、平均13.0点)。

「借金の総コストを正確に計算できない」という状況が、約半数の日本人に当てはまるとすれば、金融機関が「月々いくら」という表示方法を採用し続けることは、利用者にとって非常に不利な情報環境を生み出しています。

手続きの煩雑さも借金のデメリット——「借りるは易し、返すは難し」

今回の返済手続きを進める中で感じたのは、借金は返すときも大変だということです。

  • 手続きが複雑
  • 印鑑証明書が必要
  • 書類のやり取りが発生する

さらに、以前に引き落としができなかった際には損害遅延金として14%の金利が請求されました。消費者金融並みの条件に驚き、改めて「これは長く関わるべきではない」と感じました。

ここで、主な借入の金利水準を整理しておきます。

借入の種類 一般的な金利水準 根拠・出典
住宅ローン(変動) 0.3〜1.0%程度 住宅金融支援機構「住宅ローン金利情報」2024年
住宅ローン(固定・フラット35) 1.5〜3.0%程度 住宅金融支援機構「フラット35」2024年
諸費用ローン(今回のケース) 年利 4.0% 実際の契約内容
カードローン(銀行系) 年利 3.0〜14.5% 各行公表値(2024年)
今回の遅延損害金 年利 14.0% 実際の請求内容
消費者金融(上限) 年利 18.0〜20.0% 貸金業法第13条の3(上限金利規制)

遅延損害金14%という数字は、消費者金融の上限(貸金業法により年20%)にかなり近い水準です。「住宅ローンの付随商品だから安心」という思い込みがいかに危険かを示しています。

日本の家計はどれだけ借金をしているのか

今回の経験を踏まえ、日本全体の家計債務状況もデータで確認しておきましょう。

日本銀行「資金循環統計(2023年)」によれば、日本の家計部門の借入残高は約340兆円に達しており、そのうち住宅ローンが約7割を占めています。一方、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2023年・二人以上世帯)」では、次のような実態が浮かび上がります。

調査項目(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査2023年」二人以上世帯) 数値
借入がある世帯の割合 約39%
借入の主な目的(第1位) 住宅取得・リフォーム(約73%)
家計が「借入の総コストを把握している」と答えた割合 約43%
金融資産ゼロ(貯蓄なし)世帯の割合 約23%

住宅ローン保有世帯の約57%が「借入の総コストを正確に把握していない」という実態は、フレーミング効果や現在バイアスが現実の家計行動に影響を与えていることを示す一例と言えます。

借りるときは簡単、返すときは大変。
これは本当に典型的な構造です。契約するときはスムーズに進む一方で、いざ返済しようとすると手続きは煩雑で、時間も手間もかかります。さらに疑問に感じたのは、返済するためにも事務手数料がかかるという点です。

こうした仕組みを含めて、借金は利用者にとって不利になりやすい構造になっていると実感しました。

金融商品としての本質を理解することが重要

今回の経験を通して感じたのは、これらはすべて金融商品であるということです。

  • 利息収入を前提としている
  • 長期間で利益が出る仕組みになっている
  • 利用者が気づかないうちに負担が増える

経済学者のトーマス・ソウェルはその著作の中で、「金融の世界において無知はコストとなり、知識は資産となる」と述べています。まさにマネーリテラシーの差が、払う利息の差に直結するのです。

金融機関の「収益構造」を知る

金融機関にとって、貸出金利は主要な収益源です。日本銀行「銀行等の貸出約定平均金利(2023年)」によると、国内銀行の消費者向け貸出の平均約定金利は年3〜5%台で推移しており、住宅ローン変動金利(年0.3〜0.5%)との差は大きいことがわかります。

つまり、住宅ローンで顧客を獲得し、付随する諸費用ローン・火災保険・その他金融商品で収益を確保するビジネスモデルが存在します。消費者としては、「パッケージとして提示されているから安心」ではなく、個別の商品ごとに条件を精査する視点が重要です。

金融商品の種類 金融機関の収益源 消費者が注意すべき点
住宅ローン本体 低金利・薄利多売 変動か固定か・返済期間
諸費用ローン(付帯) 高金利・確実な収益 総支払額・繰上げ返済の可否
団体信用生命保険 保険料収入 保障内容・保険料の妥当性
火災保険(セット販売) 手数料・保険料収入 他社との比較・補償内容

仕組みを理解していれば「これは本当に必要な借入なのか」と立ち止まって考えることができます。しかし知識がない状態では、提示された条件をそのまま受け入れてしまいがちです。

借金との向き合い方——資産形成を加速させるシンプルな原則

今回の経験から、今後の方針はシンプルです。

  1. まずは借金を返済すること
  2. 借金をしないこと
  3. 貯蓄をして余剰資金をつくり、投資に回すこと

借金は資産形成のスピードを確実に下げます。逆に、借金を減らすことはそのまま資産形成を加速させる行動になります。

これは投資の世界で長年語られてきた原則とも一致しています。バートン・マルキールは著書『ウォール街のランダム・ウォーカー』の中で、「投資で安定したリターンを得るより先に、高金利の負債を返済せよ」と繰り返し説いています。年利4%の確実なコスト(利息)を消すことは、年利4%の確実なリターンを得るのと同義だからです。

「借金返済 vs 投資、どちらを優先すべきか」という問いに対しては、借入金利が期待リターンを上回るなら返済を優先するのが合理的な判断です。

インデックス投資の長期リターンと比較する

主要インデックスの長期実績(円換算・参考値)を参照すると、以下のようになります。

指数・資産クラス 過去20〜30年の年率リターン(円換算・参考) 最大下落率(参考)
MSCIオール・カントリー(全世界株式) 約6〜8%(為替込み) 約▲55%(2008〜09年)
S&P500(米国株式) 約8〜10%(ドルベース) 約▲57%(2007〜09年)
日経平均株価 約3〜5%(直近30年平均) 約▲80%(バブル崩壊後)
諸費用ローン返済(年利4%) 4%・確定(リスクゼロ) ゼロ

長期では全世界株式の期待リターンが年利4%を上回る可能性はあります。しかし、「確実に年利4%のコストがかかる借金の返済」と「期待値として年利4%を超えるかもしれない投資」を比べると、リスク調整後のリターンという観点では返済のほうが理にかなっています。

なお、現行のNISA制度(2024年〜)では年間最大360万円の非課税投資が可能です。ローンを返済して資金を確保し、その後NISAを活用してインデックス投資に資金を移していく順序が、多くの個人投資家にとって合理的な戦略と言えます。

状況 推奨される行動 考え方
借入金利 > 投資の期待リターン 返済を優先 返済=確実なリターン獲得
借入金利 ≒ 投資の期待リターン 状況に応じてバランスをとる 心理的負荷も含めて判断
借入金利 < 投資の期待リターン(例:住宅ローン0.5%) 投資を優先(繰上げ返済は慎重に) NISA活用で税メリットも享受

今回のケースでは年利4%の利息が確実に発生するため、返済を優先する判断は合理的でした。

まとめ

諸費用ローンのような小さな借入でも、長期間になることで大きな利息を支払うことになります。

毎月の支払いだけで判断するのではなく、総支払額で判断することが大切です。

今回のように早めに見直すことで、将来支払うはずだったお金を大きく減らすことができます。

改めて、借金と向き合う際の5つの視点を整理しておきます。

視点 チェックすべきこと
① 総支払額 月々ではなく、最終的に何円支払うか
② 金利水準 住宅ローン本体と比べて何倍の金利がついているか
③ 繰上げ返済の効果 手数料を払っても、残利息より節約できるか
④ 機会費用 返済しない場合の利息コストと投資リターンを比較したか
⑤ 遅延リスク 引き落とし失敗時の遅延損害金はいくらか

住宅ローンを検討している方、すでに借入がある方も、一度ご自身の契約内容を見直してみることをおすすめします。

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