『眠りながら巨富を得る』との出会いから10年
『眠りながら巨富を得る』。
このタイトル、最高じゃないですか。眠っているあいだに巨万の富を得る、なんて、はじめて目にしたとき思わず手に取ってしまいました。
私がこの本に出会ったのは今から10年以上前のことです。当時は借金もあり、暗い道をさまよう暮らしでした。何度も絶望しかけて、マーフィーを信じてはいるのにすぐには好転しない現実に、疲れ果てていたこともありました。それでもこうして10年が経過してみると、やっぱりマーフィーはすごかったということが分かります。今では借金もなく、結婚もしました。個人事業主として、自分の時間とお金をかなり自由にコントロールしながら暮らせるようになりました。仕事は週に1日だけ出社する働き方、朝3時55分に起きて2時間歩き、読書と日記の時間を持つ。そんな生活が成り立っているのは、間違いなくこの本との出会いがあったからだと思っています。
最近、また読み直しました。そして、ジョセフ・マーフィーについてWebで検索したときに思ったほど記事が見つからなかったので、紹介したいと思いました。
今回は『眠りながら巨富を得る』とその訳者、そしてジョセフ・マーフィーという人物そのものについて書いていきます。
訳者「大島淳一」は、あの渡部昇一先生だった
『眠りながら巨富を得る』の訳者は「大島淳一」となっています。
この大島淳一というのは、実は渡部昇一先生のペンネームです。
渡部昇一先生といえば、ベストセラー『知的生活の方法』(講談社現代新書) で知られる上智大学の教授で、戦後日本を代表する英語学者・評論家。「知の巨人」とも称された人物です。膨大な蔵書と知的生活への向き合い方は、今もたくさんの読者に影響を与え続けています。
その渡部先生が1950年代後半の留学中にジョセフ・マーフィーの著作と出会い、「大島淳一」という名前で翻訳して日本に紹介した。これが日本における「マーフィーの法則(潜在意識の法則)」のはじまりです。
渡部先生はインタビューで、こう振り返っています。
「1人ひとりが夢に向かって努力すれば、国も栄える。そう考えた私は、このマーフィーの書を翻訳し、大島淳一の名で日本に紹介しました。『眠りながら成功する』は、予想以上のベストセラー、そしてロングセラーとなりました。戦後からの復興をいっそう加速させる一助となりました。」(『渡部昇一「マーフィーの成功法則」CDブック』マキノ出版ムック より)
知の巨人と呼ばれた人がマーフィーを訳し、そして自らもその法則を実践していた。そう思うと、ますますこの本を真剣に読みたくなりませんか。私はワクワクします。
渡部先生(=大島淳一)による主な翻訳書は次のとおりです。
| 書名 | 出版社 | 原著刊行 |
|---|---|---|
| 眠りながら成功する | 産業能率大学出版部 | 1963年 |
| 眠りながら巨富を得る | 産業能率大学出版部 | ― |
| マーフィー100の成功法則 | 産業能率大学出版部 / 知的生きかた文庫 | ― |
個人的に、マーフィーの本は何種類か出ていますが、渡部先生が訳した本がいちばん好きです。文章の品格と、原文を尊重する姿勢が伝わってくる訳文だからです。「マーフィー初心者はまず大島淳一訳から」とよく言われるのも、納得です。
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ジョセフ・マーフィーとは ― 牧師にして潜在意識の法則の提唱者
ここで、原著者であるジョセフ・マーフィーがどんな人物だったのかを整理しておきます。私自身、長年マーフィーを読みながら、書き手の人生をあまり知らなかったので、調べていてとても面白かったです。
ジョセフ・マーフィー (Joseph Murphy, 1898年5月20日 – 1981年12月15日) は、米国で活動したアイルランド出身の宗教家・著述家です。アイルランド南部のコーク州の小さな田舎町で、敬虔なカトリックの家庭に生まれました。父親は学校の校長で、自身もカトリックの神学校に進みます。
その後、20代でニューヨークに渡り薬剤師となり、やがてニューソート運動の流れにあるディヴァイン・サイエンス教会に出会います。ロサンゼルスの同教会で28年にわたって牧師職をつとめた人物です。
マーフィーの思想形成の出発点となったのは、青年時代に「サルコーマ(悪性腫瘍)」を患った体験でした。ニューソートの祖フィニアス・クインビーらが用いていた「潜在意識への呼びかけ」による心理療法で完治した、と本人が語っています。この経験から、彼は 「潜在意識を利用・操作することで自らや周りの人さえも成功・幸福へと導く」という「潜在意識の法則」を提唱するようになりました。
マーフィーの基本プロフィールをまとめると、こんな人物像になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生没年 | 1898年〜1981年(83歳没) |
| 出身 | アイルランド・コーク州 |
| 活動拠点 | 主にアメリカ・ロサンゼルス |
| 学位 | 神学・哲学・法学・薬理学の博士号 |
| 職業 | 牧師・著述家・教育家・講演家 |
| 所属教団 | ディヴァイン・サイエンス教会(ニューソート系) |
| 代表的著作 | 『眠りながら成功する』(1963年)など35冊以上 |
| 中心思想 | 潜在意識の法則・アファメーション・積極思考 |
マーフィーの妻によれば、その生活は「もっぱら仕事と読書に費やされる、たいへん簡素なもの」だったといいます。私はここがすごく好きで、この本に書かれていることがふわっとした「引き寄せ」ではなく、地に足のついた研究と実践から生まれているのだと感じます。
ちなみに、よく混同されるのですが、「失敗しうるものは失敗する」というあの「マーフィーの法則」のマーフィーは別人(アメリカの航空工学者エドワード・A・マーフィー・ジュニア)です。ジョセフ・マーフィーが提唱したのはあくまで「潜在意識の法則」のほうです。
『眠りながら巨富を得る』とは、どんな本なのか
『眠りながら巨富を得る』は、マーフィーの代表作『眠りながら成功する』に続く「マーフィーの成功法則 実践編」と位置づけられている1冊です。お金、豊かさ、富というテーマに焦点を絞って、潜在意識をどう使えばそれを引き寄せられるのかが、徹底的に書かれています。
マーフィー本を読んできた人のあいだではよく、「初心者はまず『眠りながら成功する』から入り、繰り返し読み込んだあとに『眠りながら巨富を得る』に進むのがいい」と言われます。実際、巨富のほうは情報量が多く、章ごとに「記憶してください」と銘打たれた要約が並ぶ、じっくり腰を据えて読むタイプの本です。
あなたがこの世に生まれたのは、豊かな人生、つまり愛と平和と喜びと豊かな暮らしに満ちた人生を送るためなのです。あなたの内にある宝庫の宝を、今から解き放してください。
あなたの富と、健康と、成功を、今、受け入れてください。先に延ばすのはおやめなさい。神は永遠なる今です! これはあなたのよきものが今あるという意味です。平和を今、念じなさい。神の愛があなたの魂を今、この瞬間に満たすことを念じなさい。富とは、あなたの心の中にある思考イメージです。神の富は今、あなたの人生を循環しているのだと念じなさい。あなたが習慣的にこう念じていますと、あなたの潜在意識は否応なしにあなたに富を実現させるのです。
― ジョセフ・マーフィー(大島淳一・訳)『眠りながら巨富を得る』産業能率大学出版部
「先に延ばすのはおやめなさい」。これがこの本のいちばん大事なメッセージだと私は思っています。富も、健康も、成功も、「いつか手に入れるもの」ではなく「今、受け入れるもの」。富は、銀行口座の数字より前に、まず自分の心のなかにある思考イメージとして存在している。だから、いまここでそのイメージを持つことを習慣にすればいい ― そう、マーフィーは何度も何度も繰り返し書いてくれます。
そしてここがマーフィーらしいなと思うところなのですが、彼は「念じれば必ず叶うので頑張って念じましょう」と力んでいるのではないんですね。「習慣的にこう念じていますと、あなたの潜在意識は否応なしにあなたに富を実現させるのです」と書く。主役は意志の力ではなく、習慣としての思考と、そこに反応する潜在意識のほう。これは、毎朝決まった時間に起きて、決まった距離を歩いて、決まった本を開く、という「淡々と続ける」生き方を大事にしている人にとって、とても腑に落ちる考え方ではないでしょうか。
実践して思うこと
マーフィーが言っているのは、決して「楽して富を得る方法」ではない、ということです。「眠りながら」というのは、ベッドで横になっていれば降ってくるという意味ではありません。むしろ、潜在意識という深い層に、繰り返し繰り返し「豊かさのイメージ」を入れ続ける、地道で根気のいる作業です。
渡部昇一先生という、戦後日本を代表する知性が、この本を訳すことに人生のかなりの時間を割いた。そして自らも実践していた。そのこと自体が、この本の価値を物語っていると思います。
📖 マーフィー『眠りながら巨富を得る』
ジョセフ・マーフィー(著) / 大島淳一(訳) / 産業能率大学出版部
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