我が家の夫の合言葉は「無職になりたい」。これ、本気です。実際、私と出会って2年後には前の会社を辞めて、1年間しっかりニートをしていました。ただ無収入で過ごしたわけではなく、失業保険を受給し、さらに職業訓練校に通って給付期間を延長。「使える公的制度は、2人で知恵を出し合ってフル活用する」というのが、我が家のスタイルです。
そんな我が家が次に狙うのが育休。夫には「産後パパ育休」+「育児休業」を組み合わせてMAXまで取得してもらいます。私は個人事業主(フリーランス・42歳)、夫は正社員の会社員。「夫が1年休んで、うちの家計は実際いくら入ってくるの?」を調べた、そのお金の記録です。制度の仕組みと、額面31万円のケースでいくら受け取れるのかを、公的データを引用しながらまとめました。
そもそも「産後パパ育休」と「育児休業」は別モノ
男性が使える休みは、大きく2つあります。この2つは併用でき、組み合わせることで長く取得できます。
| 制度 | 取得できる期間 | 分割 | いつ取る |
|---|---|---|---|
| 産後パパ育休 (出生時育児休業) |
子の出生後8週間以内に最大4週間(28日) | 2回まで分割可 | 産後すぐ |
| 育児休業 | 原則子が1歳まで(保育園に入れない等の条件で最長2歳まで延長可) | 2回まで分割可 | 産後パパ育休の後〜 |
夫の「最大取得プラン」は、産後パパ育休で28日 → そのまま育児休業へ移行し、子が1歳(延長すれば1歳6か月〜2歳)になるまで、というイメージです。
男性の育休、実際どれくらい取っている?
厚生労働省「2024年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は40.5%で、初めて4割台に到達しました。女性は86.6%です。ここ数年で急上昇しています。
| 年度 | 男性の育休取得率 |
|---|---|
| 2020年度 | 12.65% |
| 2021年度 | 13.97% |
| 2022年度 | 17.13% |
| 2023年度 | 30.1% |
| 2024年度 | 40.5% |
出典:厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」/JILPT
ただし「取得期間」はまだ短い ― 1年取る人はごく少数
取得率は上がっても、期間は依然として短いのが実態です。同調査(配偶者が出産した男性の取得期間)では、男性は約4割が「2週間未満」。もっとも多いのが「1か月〜3か月未満」で28.0%、次いで「5日〜2週間未満」22.0%、「2週間〜1か月未満」20.4%と続きます。
| 男性の育休取得期間 | 割合 |
|---|---|
| 5日未満 | 約1割 |
| 5日〜2週間未満 | 22.0% |
| 2週間〜1か月未満 | 20.4% |
| 1か月〜3か月未満 | 28.0%(最多) |
| 3か月以上 | 少数 |
| 1年以上 | ごくわずか(数%以下) |
出典:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」
つまり、夫が計画している「1年取得」は、男性全体の中では極めて少数派ということになります。一方で「希望」を聞くと様子は違い、厚労省の調査では若い男性の約3割が「半年以上取りたい」、16.0%が「1年以上取りたい」と回答しています(出典:株式会社ワーク・ライフバランス調べ/厚労省委託調査)。希望と現実のギャップが大きく、我が家はそのギャップを埋めにいく側、というわけです。
ここが本題 ― お金は「いくら」入ってくる?
一番気になるお金の話です。育休中の収入は、勤務先からの給与ではなく、雇用保険から支給される給付金です。ポイントは3つの給付を組み合わせること。
1. 育児休業給付金 … 休業開始時賃金の67%(開始から通算180日まで)、181日目以降は50%。
2. 出生時育児休業給付金 … 産後パパ育休期間に対して67%。
3. 出生後休業支援給付金(2025年4月スタート) … 上記に+13%を上乗せ。原則は夫婦がともに一定期間育休を取ると、最大28日間支給されます。ただし例外あり(後述。私のような個人事業主の妻でも、夫は受け取れます)。
この3が加わったことで、67%+13%=80%(額面)となり、育休中は健康保険・厚生年金の保険料が免除され、給付金は非課税のため、手取りベースでは休業前とほぼ同じ(=手取り10割相当)になります(出典:厚生労働省「出生後休業支援給付金」リーフレット、マネーフォワード クラウド給与)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上乗せ率 | +13%(育児休業給付67%と合わせて80%) |
| 支給日数 | 最大28日間 |
| 父の要件 | 子の出生後8週間以内に14日以上の育休取得 |
| 母の要件 | 子の出生後16週間以内に14日以上の育休取得 |
| 前提 | 原則、夫婦がともに育休を取得すること(例外あり↓) |
「配偶者も育休」が要らない例外 ― ここが我が家の分かれ道だった
この給付を調べていて、私が一番ヒヤッとしたのがここです。「夫婦ともに育休」が条件なら、雇用保険に入っていない個人事業主の私は育休を取れない=夫は13%をもらえないの?と。
結論、もらえます。配偶者が育休を取れない一定の事情がある場合は、本人(夫)の育休取得だけで支給される例外が設けられています。次のいずれかに当てはまればOKです。
| 配偶者の育休が「不要」になるケース |
|---|
| 配偶者がいない(ひとり親) |
| 配偶者が子と法律上の親子関係にない |
| 配偶者からの暴力等で別居中 |
| 配偶者が無業(専業主婦・主夫など) |
| 配偶者が自営業者・フリーランスなど、雇用される労働者でない ← 私はここ |
| 配偶者が産後休業中 |
| その他、配偶者が育児休業をすることができない場合 |
出典:厚生労働省「出生後休業支援給付金」リーフレット
私は個人事業主(フリーランス)=雇用される労働者ではないので、この例外にドンピシャで該当します。つまり、私が育休を取れなくても、夫はちゃんと80%(手取り10割相当)を受け取れるということ。ホッとしました。
ただし例外の場合は、配偶者の状況を証明する書類が必要になります。私のケースだと、夫婦であることが分かる住民票の写しや、私の自営業を確認できる直近の課税証明書などを求められることが多いので、早めに準備しておくと安心です。
計算の元になるのは「総支給額」― 基本給でも手取りでもない
「うちは基本給いくらだから…」と計算しがちですが、給付額の元になるのは基本給ではありません。かといって、給与明細の一番下の振込額(手取り)でもありません。
正しくは、育休開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日で「休業開始時賃金日額」を出し、これに67%・50%をかけます。つまりベースになるのは社会保険料や税金を引く前の「総支給額(額面)」です。何が入って何が入らないかを整理します。
| 区分 | 給付計算に… | 具体例 |
|---|---|---|
| 基本給 | 含む | 毎月の基本給 |
| 各種手当 | 含む | 残業手当、通勤手当、役職手当、住宅手当 など |
| 賞与(ボーナス) | 含まない | 夏・冬の賞与、臨時の一時金 |
| 手取り額 | 使わない | 控除後の振込額は計算に用いない |
残業の多い月・少ない月の差は6か月でならされるので、一番正確なのは直近6か月の給与明細の「総支給額」を平均するやり方です。ボーナスだけは除いて考えます。
なお、前章で出た「手取り10割」という言葉は、計算に手取りを使うという意味ではありません。ベースはあくまで総支給額(額面)で、その80%。ただし給付金は非課税で、育休中は社会保険料も免除されるため、結果として受け取る額が働いていた頃の手取りとほぼ同じになる、という意味です。「額面ベースで計算 → 手取り換算では目減りが小さい」と覚えると混乱しません。
額面31万円だと、こうなる
夫の総支給額(手当込み・ボーナス除く)を月31万円と仮定して計算します(賃金月額の上限483,300円/2025年8月〜2026年7月の範囲内なので、そのままの率で計算できます)。
| 期間 | 受け取る給付 | 支給率 | 月額(概算) | 手取り感覚 |
|---|---|---|---|---|
| 産後パパ育休〜通算28日 | 出生時育児休業給付金+出生後休業支援給付金 | 67%+13%=80% | 約24.8万円 | 休業前とほぼ同じ(約10割) |
| 〜育休開始から通算180日 | 育児休業給付金 | 67% | 約20.77万円 | 手取り約8割 |
| 181日目〜1歳まで | 育児休業給付金 | 50% | 15.5万円 | 手取り約6〜7割 |
計算式はシンプルで、31万円 × 各支給率です(80%=248,000円、67%=207,700円、50%=155,000円)。
これを1年間(産後パパ育休〜子が1歳になるまで)通しで合計すると、ざっくり約224万円が非課税で支給される計算になります(内訳:80%期間 約23万円+67%期間 約105万円+50%期間 約96万円)。給与でこれを稼ぐには額面ではもっと多い金額が必要なので、「額面80%・67%」でも手取り換算では意外と目減りが小さい、というのが実感になるはずです。
なお、給付には上限があります。2025年8月〜2026年7月の場合、67%期の月額上限は約323,811円、50%期は約241,650円です(賃金日額上限16,110円ベース)。額面31万円の夫はこの上限に達しないため、フルの率で受け取れます(出典:厚生労働省、給与計算ソフト各社解説)。
「もらえるタイミング」と、忘れがちな注意点
給付金は毎月ではなく、原則2か月に1回まとめて振り込まれます。休業に入ってすぐは無収入の期間ができるので、当面の生活費(2〜3か月分)は現金で確保しておくと安心です。
また、手取り10割になるのは最初の28日間だけ。その後は67%→50%と下がっていくので、「1年間ずっと10割」ではない点は要注意です。長期取得なら、後半(50%期)に向けて家計を少しずつ引き締める前提で組みます。
個人事業主の私(妻)の場合はどうなる?
ここは自分でも調べて驚いた点なので共有します。私のような個人事業主(フリーランス)は雇用保険に入っていないため、育児休業給付金は受け取れません。 会社員の妻が受け取れる「出産手当金(産休手当)」も、健康保険の被保険者向けなので対象外です。
ただし、個人事業主でも使える公的サポートはあります。
| 制度 | 個人事業主(国保・国民年金)の私 |
|---|---|
| 出産育児一時金 | 受け取れる(子1人につき原則50万円) |
| 出産手当金(産休手当) | 対象外 |
| 育児休業給付金 | 対象外 |
| 国民年金保険料の産前産後免除 | 対象(出産予定月の前月〜4か月分が免除) |
| 国民健康保険料の産前産後軽減 | 対象(出産予定月の前月〜4か月分の所得割・均等割を軽減。多胎は3か月前〜6か月分) |
まとめ ― 「無職になりたい」を現実にする家計設計
男性の育休取得率は40.5%まで伸びましたが、1年取る人はまだごく少数派。だからこそ、お金の設計をきちんとすれば、長期取得は十分に現実的です。計算の元は基本給でも手取りでもなく総支給額(額面)。総支給額31万円なら、最初の28日は手取り約10割、その後は67%→50%で、1年でおよそ224万円が非課税で入ってくる ― この見通しが立った瞬間、夫の「無職になりたい」は、次に叶える現実的なライフプランになりました。失業保険のときと同じで、制度をちゃんと理解して2人で知恵を出せば、休みは怖くありません。
大事なのは、「休めるかどうか」ではなく「いくら入るかを正確に把握して、どう過ごすか」。数字が見えれば、育休はぐっと怖くなくなります。
FAQ:予定日がズレたらどうする?
「産後パパ育休を出産日から取るつもりでも、予定日なんてズレるよね?」という疑問。結論、早くても遅くても取得できます。制度が予定日のズレを前提に作られていて、8週間の枠の数え方が自動で調整されます。
| ケース | 8週間の数え方 | できる変更 |
|---|---|---|
| 予定日より早く生まれた | 出生日 〜 出産予定日から8週間後 | 開始日の繰上げ(休業1回につき1回・変更後開始日の1週間前までに申出) |
| 予定日より遅く生まれた | 出産予定日 〜 出生日から8週間後 | 出産予定日から開始OK(まだ生まれていなくても可)/終了日の繰下げ |
ポイントは、遅れた場合は「まだ生まれていなくても出産予定日から休業を開始できる」こと。逆に早まった場合も、対象期間が前に伸びるので慌てる必要はありません。仮に開始日の繰上げが間に合わなくても、生まれた後から始めれば最大28日間はしっかり確保できます。
この28日をきちんと取れれば、出生後休業支援給付金の「14日以上」要件も余裕でクリア。多少のズレでお金の条件が崩れることはないので、安心して構えていて大丈夫です。
