「無職になりたい」夫に1年育休を提案したら、パタニティブルーになった話

高齢出産

「無職になりたい」。これは、うちの旦那が出会った頃から言い続けている“夢”です。だからこそ、今回の妊娠をきっかけに「パパ育休と育休を合わせて1年間休んでみたら?」と提案しました。収入のことは私が個人事業主として働くので問題なし。願ってもないチャンスのはずでした。

ところが、いざ「1年休む」と決めようとした瞬間、旦那が迷い始めたのです。理由はお金ではなく、「1年休むと、自分はどうなるんだろう?」という未知への不安。彼はこれを「パタニティブルー」と呼んでいました。

普段ほとんど悩まない旦那が揺れているのが、私にとっては逆に興味深く、「これも妊娠という2人の新しいチャレンジだな」と思いながら、いろいろ調べて話し合ってみました。

「パタニティブルー」とは?

パタニティブルー(paternity blue)とは、子どもが生まれること(生まれる前後)で、父親が責任感や将来への不安、ワークライフバランスの悩みから精神的に不安定になる状態のことです。女性の「マタニティブルー」の父親版、と言うとイメージしやすいと思います。

「産む側じゃないのに?」と思われがちですが、データを見ると決して珍しくありません。父親の産後うつの発症率は、いくつかの調査でおおむね約10%(10人に1人)とされています。国立成育医療研究センターの調査でも、父親の産前・産後のメンタル不調は無視できない規模で確認されています。

主な原因として挙げられるのは、次のようなものです。

主な原因 中身
父親としてのプレッシャー 「イクメンであるべき」という社会的期待+経済的責任感
生活スタイルの急変 妊娠期を身体で経験しない分、実感が湧きにくいまま生活だけが激変する
夫婦関係の変化 パートナーが育児に集中し、2人の時間が減る

そして「なりやすい人」の特徴は、責任感が強い・真面目・完璧主義・環境の変化にストレスを感じやすい人だそうです。……我が家の「無職になりたい」旦那に、これがそのまま当てはまるかは正直微妙なのですが、「未知の1年が怖い」という感覚は、まさにこの“生活スタイルの急変への不安”なのだと思います。

「1年休む」がなぜ怖いのか — データで見えたこと

調べてみて分かったのは、そもそも男性の長期育休には“前例(ロードマップ)”がまだ少ないということでした。

男性の育休取得率は近年一気に伸びています。

年度 男性の育休取得率
2020年度 12.65%
2021年度 13.97%
2022年度 17.13%
2023年度 30.1%
2024年度 40.5%(過去最高)

2024年度は前年から10.4ポイントも上昇し、初めて4割台に。ちなみに女性の取得率は86.6%です。「男性も育休を取る時代」になってきたのは間違いありません。

ところが、“取る”ようにはなっても、“長く取る”人はまだ少数派です。取得した男性の期間の内訳を見ると、こうなります(令和5年度)。

取得期間 割合
5日未満 15.7%
5日〜2週間未満 22.0%
2週間〜1ヶ月未満 20.4%
1ヶ月以上 41.9%

「1ヶ月以上」がようやく4割を超えた段階で、大企業でも平均は46.5日ほど。つまり、「1年」という選択は、男性育休の世界ではまだかなりレアケースなんです。

旦那の「1年休むとどうなるんだろう」という不安の正体は、たぶんこれ。まわりに“1年休んで、そのあとどうなったか”を語ってくれる同性の先輩がほとんどいない。データが示すとおり、地図のない道を歩こうとしているから怖い、というのは、むしろ自然な反応だなと思いました。

女性はどうしているのか

「女性で育休を取る人も、キャリアと相談しながら取っているのかな?」という私の疑問についても考えてみました。女性の取得率は86.6%と高いですが、その裏では「復帰後のポジション」「ブランクへの不安」「時短でどこまでやれるか」と、多くの人がキャリアと天秤にかけながら決めています。取得率が高い=みんな迷っていない、ではないんですよね。

そう考えると、旦那が今感じている迷いは、女性が長年向き合ってきた迷いと本質的には同じもの。性別に関係なく、「休むこと」と「自分の人生」をどう接続するかという問いなのだと思います。

パタニティブルーとどう向き合う?

調べたことと、我が家で実際にやってみたことを合わせると、向き合い方のポイントはシンプルでした。

ひとつは、不安を「気の持ちよう」で片付けないこと。約10%が経験する、原因もはっきりしている状態なので、「あなたが弱いわけじゃない」と前提を共有するだけで、旦那の表情はやわらぎました。

もうひとつは、未知を“具体”に変えること。「1年どうなるか分からない」を、「最初の1ヶ月はこう」「半年後にこう感じたら働き方を見直す」と、期間で区切って一緒に想像してみる。地図がないなら2人で描けばいい、というスタンスです。

そして、逃げ道を残しておくこと。1年と決めても、途中で「やっぱり働きたい」と思えば戻ればいい。ここを握りしめすぎないだけで、ずいぶん楽になるようでした。

私から伝えたこと —「本音で生きるのが一番」

最後に、私が旦那に伝えたことを書いておきます。

「無職になりたい」は、今に始まったことではありません。出会ったときから「家で好きなことをしていたい」と話していた彼。一方の私は、仕事ばかりしてきたし、仕事をしたくないと思ったことがほぼありません。子どもの頃からの夢は「社長になりたい」で、自分が子育てに専念する将来像はゼロ。バリバリ働いて、めちゃくちゃ稼いで、家族を養う——そういうライフプランを描いてきたからこそ、「働きたくない」という彼を、私は自然に選んだのだと思います。

だから彼には、「“無職になりたい”が本音なら、せっかく休めるんだから休めばいい。もし休んでみて『仕事も楽しい』と気持ちが変わったら、そのとき働けばいい」と伝えました。どちらでもいい。本音で生きるのが一番だから。

ただ、我が家は私が出産1ヶ月後に仕事復帰する予定なので、「だからこそ、あなたに育休を取ってほしい」という私の本音もちゃんと伝えました。お互いの本音を出し合って、地図のない1年を2人で描いていく。悩まない旦那の“初めての迷い”に立ち会えるこの時間を、私はけっこう楽しんでいます。

パタニティブルーは、真剣に父親になろうとしているサインなのかもしれません。

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