毎朝4時に起きて、2時間歩いています。
その習慣を続けるために気づいたことがあります。
「早起きできるかどうか」は意志の問題ではなく、働き方の設計の問題だった、ということ。
まず知ってほしい——日本人はそもそも眠れていない
「明日こそ早起きしよう」と思いながら、ギリギリまで寝てしまう。そんな経験が続くとき、つい「自分の意志が弱いせいだ」と思いがちです。でも本当にそうでしょうか。
OECD(経済協力開発機構)の国際比較調査によると、日本人の睡眠時間は男女ともに8時間未満で、世界主要29カ国中、韓国に次いで2番目に短いという結果が出ています。最長の南アフリカ(9時間22分)と比べると、1時間30分以上の差です。
日本人は構造的に「眠れていない国」に生きています。早起きができないのは、個人の問題ではなくシステムの問題かもしれません。
通勤が、早起きのリズムを壊している
早起きを阻む最大の構造的な原因のひとつが、通勤です。
総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」によると、日本の平均通勤時間は片道39分・往復約1時間19分。これを年間に換算すると——
| 期間 | 通勤に費やす時間 | 換算すると |
| 1ヶ月(20日出勤) | 約26時間 | 丸1日以上 |
| 1年間(240日出勤) | 約312時間 | 丸13日分 |
しかも、総務省「令和3年社会生活基本調査」の都道府県別データによると、通勤時間が全国最長の神奈川県(片道約50分)と通勤時間が短い地方県では、平均睡眠時間にも差が見られます。「早起きしているつもり」でも、その時間の大半が「通勤のための起床」に消えているのです。
🔢 あなたの場合、何時間が返ってくる?
39分
週3日
週1〜5日リモートで得られる時間(年間)
片道 39 分の通勤 × 週 3 日リモートで、年間 187時間(丸 7.8 日分)が手元に戻ります。※年間稼働48週で計算
データが示す「リモートワーク×睡眠」の関係
では、通勤がなくなるとどうなるのか。リモートワークと睡眠に関するデータをまとめます。
■ リモートワークと睡眠に関する調査まとめ
→ リモートワークの普及によって、平日と休日の睡眠時間帯のズレ(社会的時差ボケ)が約30分縮まったことが明らかになっています(ナショナル ジオグラフィック日本版, 2023)
→ 米国では、リモートワーク移行により通勤時間が1日当たり6,000万時間削減され、浮いた分の多くが睡眠時間の拡充に充てられました(NY連銀, Bloomberg 2022年報告)
→ 週1回以上リモートワークをしている1,000名への調査で、忙しいリモートワーカーほど「夜の就寝時間が早まった」と回答する割合が高い傾向が確認されています(CLASSY, 2021)
注意:ハイブリッド勤務は逆にリズムを乱す
「週に何日か出社、残りはリモート」というハイブリッド勤務の場合、話は変わります。
■ 出社日とリモート日の起床時間ギャップ(味の素調査, n=623)
起床時間のズレ
とれない」と回答
感じる」と回答
出典:味の素株式会社「出社とリモートを繰り返す勤務者の睡眠実態調査」(20〜50代、週3日出社の睡眠課題保有者 n=623)
出社とリモートを行き来することで、体内時計が毎週リセットされてしまう状態です。「週3日出社・2日リモート」よりも、出社日を固定するか、フルリモートにするほうが、睡眠リズムの安定には効果的です。
なぜリモートワークが早寝早起きに効くのか
構造的な理由を整理すると、4つのしくみが見えてきます。
ただし、リモートワークにも落とし穴がある
リモートワークが自動的に早寝早起きをもたらすわけではありません。ライオンが就業者2,671名を対象に実施した調査では、リモートワーク実施者のほうが睡眠の質が低下したという結果も出ています。
■ リモートワークで睡眠が悪化するケースの主な原因
→ 仕事とプライベートの境界が曖昧になり、オンとオフが切り替わらない
→ スマートフォンやゲームへの依存が増え、就寝時間が後ろ倒しになる
→ 外出・運動の機会が減り、夜に眠くなりにくくなる
→ 孤立感からくるストレスで、眠りが浅くなる
リモートワークは「自由」を与えてくれますが、その自由をどう使うかが問われます。構造的な恩恵を最大化するには、意識的な設計が必要です。
リモートワーク×早寝早起きを成功させる4つの習慣
| # | 習慣 | ポイント |
| 1 | 起床時間を毎日固定する | 就寝時間がズレても、起きる時間だけは一定に。朝の光で体内時計がリセットされます |
| 2 | 朝に「外へ出る」理由をつくる | 通勤がなくなると日光を浴びる機会が激減します。朝の散歩を意図的に組み込みましょう |
| 3 | 退勤の「儀式」を設ける | PCを閉じる、着替える、散歩するなど、オンとオフの切り替えをはっきり決めておく |
| 4 | スマホを寝室に持ち込まない | 通勤という強制的な生活リズムがない分、より意識的に「夜の締め切り」を自分でつくる |
早起きができるかどうかは、意志の強さではなく、働き方の設計の問題です。
通勤という強制的な制約がなくなることで、自分の体のリズムに合った睡眠スケジュールが組めるようになる——それがデータの示す事実です。
リモートワークは「早寝早起きの敵」ではありません。うまく設計すれば、これ以上ない環境になります。自由を、だらしなさではなく自律に変えること。それだけで、翌朝が変わります。
まとめ
- 日本人の睡眠時間はOECD加盟国でワースト2位。早起きできないのは個人の問題ではなく、構造の問題
- 通勤時間は年間312時間(=13日分)。通勤時間が長い地域ほど睡眠時間が短い相関がある
- リモートワークによって「社会的時差ボケ」が約30分縮まることが研究で確認されている
- ハイブリッド勤務(出社+リモート混在)は起床時間が1時間ズレ、逆にリズムが乱れやすい
- 成功のカギは「自由」の設計。起床固定・朝の外出・退勤儀式・スマホ断ちの4習慣が効果的
参考:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」/OECD国際睡眠時間比較調査(2014)/味の素株式会社 睡眠実態調査(n=623)/NY連銀・Bloomberg(2022)/テレリモ総研 テレワーク睡眠調査(n=1,000)/西川「現代人の睡眠状況」/ナショナル ジオグラフィック日本版(2023.9)/ライオン株式会社 睡眠調査(n=2,671, 2020)

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